VPSとは「バーチャル・プライベート・サーバー」の略で、仮想の個人サーバーと言うような意味ですね。一般的にはレンタルサーバーなどの1種になりますが、VPSの特徴としては、共用サーバーではないため外部の影響を受けにくいことや、アプリケーションのインストールの自由度が高いことが挙げられます。
VPSはFX取引においても活用されることが多く、VPS上にMT4(取引ツール)をインストールした上で、24時間休みなくEAで自動売買取引を行う、といったことも可能になります。他にも環境を選ばずに取引できることや通信速度・約定力の向上など、単に仮想サーバーを利用すると言うだけにとどまりまらない利点が数多く存在しますね。
そこで本記事では、そんなVPSをFXで利用するメリットのほか、特定の条件付きでVPSを無料利用できるおすすめの海外FX業者などを詳しく説明していきたいと思います。
海外FXでVPSを利用するメリット
トレードをする場合、一般的にはパソコンやスマホにインストールしたMT4などの取引ツールを利用しますね。しかしVPSを利用することで、よりハイスペックな取引環境を構築できたり、端末やOSの影響を受けにくい安定した取引が可能になります。早速、具体的なVPS利用のメリットを説明していきましょう。
自動売買において優位性が高い
VPSを利用する上で最も効果が高いのが、EAなどの自動売買プログラムを使用する場合でしょう。MT4などの取引ツールの動作は、インストールしているパソコンの状態に依存します。つまり、パソコンがスリープしていたり電源が切れていれば、MT4も動作を停止した状態になるのです。
EAを利用する場合、基本的にはマーケットが開いている間は、常にプログラムを走らせ続ける必要があります。しかし、自宅のパソコンを常に起動させ続けることは、容易ではありません。1日や1週間程度なら大丈夫かも知れませんが、長期間の稼働の中では、思いがけなく電源が落ちたりフリーズしたりなどのトラブルが起きる可能性は、十分想像出来ることですね。
VPSを利用している場合は、そう言った心配は基本的には不要です。MT4は仮想サーバー上で、24時間安定して起動させ続けることができます。
また、自宅のPCをつけっぱなしにするとなると、電気料金やPC自体の消耗や劣化も気になる問題ですね。VPSを利用していれば、そのような心配も解決されます。
より速い通信速度とより安定した約定力
VPSは一般的なレンタルサーバーのような形で借りることもできますが、海外FX業者の中にはVPSサービスを提供しているところがあります。このようなVPSの場合、FX業者のデータセンターと物理的に近い位置にあるVPSを利用できる場合が多いことも特徴の1つですね。
自宅のPCなどで取引ツールを利用する場合、インターネットの通信状況やデータセンターと距離が離れていることなどから、接続速度が遅くなったり約定が遅れる場合があるかも知れません。しかし海外FX業者提供のVPSを使えば、より早くて安定した通信速度と約定力を得られるようになります。
取引量が大きいスキャルピングでも有利
短時間で取引を繰り返すスキャルピングでは、デイトレードやスイングトレードなどに比べて、エントリーとエグジットにおける高い精度が必要になります。速く確実な注文の執行は、取引ロット数が大きくなればなるほど重要になると言えるでしょう。
VPSを利用したハイスペックな取引環境は、自動売買だけではなく、取引量が大きいスキャルピングでも効果を発揮します。
自宅以外のPCでも同じ設定の取引ツールが使える
自宅PCのMT4(取引ツール)でシステムトレードや裁量トレードを行う場合、別のPCの取引ツールと自動的に同期することは出来ません。走らせているEAや、またはお気に入りのインジケーターなどを設定したチャートは、そのPCにインストールした取引ツール固有のものになります。
しかしVPSの場合、仮想サーバー上にインストールした取引ツールでトレードを行います。つまりVPSに接続しさえすれば、どの端末からでも同じ状態の取引ツールにアクセスすることが可能になるというわけですね。自宅以外でもチャートを見てトレードする人にとっては、これは非常に大きなメリットと言えるでしょう。
スマートフォンやタブレット端末でもPC版の取引ツールが使える
スマホやタブレット用として、android版やiOS版のMT4アプリなどがリリースされています。ただ、これらのアプリは裁量トレードで利用する分には非常に便利ではあるものの、EAが使えないなど機能に制限が多いのも事実ですね。
しかしスマホからVPSに接続すれば、PC版と同じMT4を携帯端末で扱うことができるようになります。外出先からでも取引状況を確認したいシステムトレーダーにとっては、有益なのではないでしょうか。
MacでもMT4を使える
基本的にMT4などの取引ツールは、Windows用のアプリケーションです。Mac版のMT4などを提供している海外FX業者はいくつかありますが、すべてのmacOSのバージョンで安定して起動できる訳ではありません。macOS用に最適化されていないため、動作が不安定になることも多くありますし、OSのバージョンによってはそもそも起動できない場合もあり、新しくなるほどその傾向は顕著になります。
そんな時にも活用できるのがVPSですね。リモートデスクトップなどのアプリを使えば、MacからでもVPSに接続して、完全な状態でMT4などを使うことが可能になります。Macユーザーのトレード環境構築にも、VPSは役立ってくれるでしょう。
海外サーバーなら日本国内の災害や停電の影響を受けない
海外FX業者が提供しているVPSの場合、VPSのサーバーも海外にあることが多いです。そのため、日本で起こる災害や停電の影響を受けないということも大きなメリットですね。
もしEAを走らせている自宅のPCが停電などでストップすれば、MT4もストップし取引も止まってしまいます。個人で出来る通信環境の整備には限界がありますので、リスクを最小限に抑えて、より安定した取引環境を作りたい場合は、VPSは大きな選択肢の1つになるでしょう。
利用条件を満たすことで無料で使える場合がある
VPS自体はレンタルサーバーのように一般的なもなので、日本国内でもさまざまな業者がサービスを展開しています。例えば国内の大手ホスティングサービス業者お名前.comでは、「お名前.com デスクトップクラウド for MT4」というMT4を使った自動売買に特化したサービスを提供していますね。
しかしVPS利用の目的が海外FXのトレードであれば、海外FX業者が行なっているVPSサービスを利用することをおすすめします。
その主な理由としては
- VPSは基本的には有料のサービスだが、取引条件を満たせば無料で使用できる
- 取引サーバーとVPSサーバーの距離が近く、より早い通信や高い約定力が期待できる
の2点。
例えば前述の「お名前.com デスクトップクラウド for MT4」は利用料金が月額1620円ですが、海外FX業者によっては一定額以上の口座残高などを条件に、無料で利用できることがあります。また約定力という面ではやはり、サーバー間距離の短縮が期待できる業者提供のVPSに軍配が上がると言えるでしょう。
ただ、月額料金自体は国内サービスの方が安く設定されていることも多いため、もし無料利用の条件を満たしていないのであれば、コスト面では「お名前.com デスクトップクラウド for MT4」を利用する方が良いですね。
無料でVPSを利用できる海外FX業者
実際にVPSを利用する場合に、どの海外FX業者が無料のVPSを提供しているのかは興味のあるところですね。ここからは各海外FX業者のVPSサービスについて見ていきたいと思います。
まずは利用料が無料になる条件を、下記の通り一覧表でまとめてみました。
FX業者名 | VPSの無料条件 |
XM | 5,000USD以上の口座残高を維持している なおかつ、月に5ロット以上の取引がある |
GemForex | ボーナスを除き、5,000USD以上の口座残高を維持している |
FBS | 1ヶ月目:合計の入金額が450USD以上ある 2ヶ月目以降:前月に3ロット以上の取引がある |
HotForex | 5,000USD以上の口座残高を維持している |
TradersTrust | 2,000USD以上の口座残高を維持している なおかつ、月に5ロット以上の取引がある |
AnzoCapital | 5,000USD以上の口座残高を維持している なおかつ、月に5ロット以上の取引がある |
ほとんどの海外FX業者で、一定額以上の口座残高と一定量以上の取引が条件となっていますね。
次からは各業者のVPSサービスについて、さらに詳しく解説していきたいと思います。
XM
海外FXの代表格とも言えるXMですが、もちろん無料VPSを提供しています。その条件は5,000USD以上の口座残高と月に5ロット以上の取引の2点。ロンドンにあるXMのデータセンターと、VPSを提供しているBeeks社のサーバーの距離はわずか1.5kmということで、安定した高速取引が期待できるでしょう。その速さは「稲妻並み」と例えられるほどで、条件を満たしているならぜひ利用したいサービスです。
サーバースペックは以下の通りですね。
XMのVPSスペック | |
OS | Windows 2012 R2 |
CPU | 1コア (600MHz) |
メモリ | 1.5GB |
HDD | 20GB |
CPUのスペックがやや低い点が気になりますが、メモリ1.5GBであればMT4単体起動+EAの稼働には利用には問題ないでしょう。
XMの全体的な評判や特徴、メリット・デメリットについては下記に詳しくまとめています。
GemForex
GemForexは元々システムトレードの提供から出発した海外FX業者ということで、VPSと相性が良いと言えますね。MT4がすでにインストールされた状態でVPSの利用を開始することができるため、余計な手間もかからず使い勝手が良いです。無料使用のための条件は、5,000USD以上の口座残高(ボーナスは除く)のみと、他業者よりもハードルが低い点も魅力と言えるでしょう。
GemForexのサーバースペックは以下の通り。
GemForexのVPSスペック | |
OS | Windows 2012 R2 |
CPU | 1コア (2.4GHz) |
メモリ | 1GB |
HDD | 不明 |
MT4インストール可能数 | 1つ |
その他 | GemForexMT4を準備済み |
CPUはまずまずですが、メモリが1GBという点がやや気になります。またMT4のインストール数も1つに制限されていますので、複数口座を使う場合は注意が必要です。
GemForexの全体的な評判や特徴、メリット・デメリットについては下記に詳しくまとめています。
FBS
3000倍という驚異のハイレバレッジと、取引キャッシュバックなどの豪華ボーナスが有名なFBSも、無料でVPSを利用できるサービスを用意しています。条件は1ヶ月目の入金額が450USD以上、2ヶ月目以降は前月に3ロット以上の取引ということで、今回紹介する6社の中では、ハードルはかなり低く使いやすいと言って良いでしょう。
サーバースペックは非公開ですが、実際に利用すると下記のようになっていました。
FBSのVPSスペック | |
OS | Windows 2012 R2 |
CPU | 不明 |
メモリ | 4GB |
HDD | 60GB |
CPU速度は不明なものの、メモリは4GBと多く、かなり快適に利用できる環境です。
FBSの全体的な評判や特徴、メリット・デメリットについては下記に詳しくまとめています。
HotForex
XMを意識したサービス展開をしているHotForexですが、VPSについてもXM同様、Beeks社のサーバーを利用しています。世界9箇所のデータセンターから、最も近い取引サーバーに接続し、高速の取引環境を提供しているということで、こちらも安定した速い取引が期待できますね。またGemForex同様VPSにMT4がインストールされた状態で利用を開始することができるため、手間がかからず使いやすいと言えます。
HotForexは無料で利用できるVPSにランクがあるのですが、最低ランクのブロンズにおける条件については5,000USD以上の口座残高の1点。さらに残高が増えればより上位のVPSを利用できるようになります。
各ランクのサーバースペックと利用条件は下記の通り。
HotForexのVPSスペック | |||
ランク | ブロンズ | シルバー | ゴールド |
OS | Windows 2012 | ||
CPU | 1 VCPU | 2 VCPU | 4 VCPU |
メモリ | 1300 MB | 2700 MB | 5120 MB |
HDD | 25GB | 50GB | 75GB |
その他 | HotForexMT4を準備済み | ||
無料利用条件 | 5,000USD以上の残高 | 8,000USD以上の残高 | 15,000USD以上の残高 |
ゴールドまでいくとかなりハイスペックなVPSが無料で利用できるようになりますね。条件も残高のみのため、比較的ハードルは低いと言えるでしょう。残高次第でハイスペックなVPSも利用できるHotForexの無料VPSサービスは、かなり優秀だと思います。
HotForexの全体的な評判や特徴、メリット・デメリットについては下記に詳しくまとめています。
TradersTrust
完全NDD採用による透明性の高い取引環境で人気を集めているTradersTrustも、FX取引で評価の高いBeeks社のサーバーを利用しています。こちらもHotForex同様ランク制となっており、それぞれのスペックと条件は下記の通り。
TradersTrustのVPSスペック | |||
ランク | ブロンズ | シルバー | ゴールド |
OS | Windows 2012 / 2008, Linux Servers | ||
CPU | 1 VCPU | 2 VCPU | 4 VCPU |
メモリ | 1.3GB | 2.7GB | 5GB |
HDD | 25GB | 50GB | 75GB |
その他 | 管理VPSサービス(オプション) | ||
無料利用条件 | 2,000USD以上の口座残高かつ、月5ロット以上の往復取引 | 3,000USD以上の口座残高かつ、月7ロット以上の往復取引 | 5,000USD以上の口座残高かつ、月10ロット以上の往復取引 |
スペックとしてはHotForexとほぼ同じですね。条件についてはHotForexほどの口座残高は必要ではありませんが、代わりに月あたりの往復取引が条件として追加されます。そこまで大きな取引量でもありませんので、こちらもHotForex同様かなり優秀な無料VPSサービスと言えるでしょう。
TradersTrustの全体的な評判や特徴、メリット・デメリットについては下記に詳しくまとめています。
AnzoCapital
海外FX業者としては珍しい完全信託保全を採用し、安心して利用できるAnzoCapital。取引環境の整備にも力を入れており、無料VPSサービスも提供しています。サーバーを多くのFX取引が行われる所と物理的に近い距離に設置しているということで、より速く安定した取引環境が期待できますね。ただ、サーバースペックは非公開となっています。
AnzoCapitalのVPSスペック |
スペック非公開 |
AnzoCapitalの全体的な評判や特徴、メリット・デメリットについては下記に詳しくまとめています。
まとめ
EAなどの自動売買を自宅で行う場合、常にPCを稼働させ続けなければいけないと言う問題があります。PC自体のトラブルや、災害や停電などの外的要因により、取引が中断してしまう危険がありますが、VPSを利用すれば、そう言った問題に煩わさせる心配はありませんね。
また、VPSを利用した高速で安定したトレード環境も魅力的です。取引量の大きいスキャルパーにとっても、より充実したトレードのためのVPS利用は、選択肢のひとつになるのではないでしょうか。VPSを無料で利用できる海外FX業者もいくつかあるので、条件を確認した上でぜひ有効に活用してください。
コメント