FX通貨ペアは非常に多くの数が流通しており、海外FX業者では、50種類以上が取引可能な場合も少なくありません。たくさん選択肢があるのは良いことですが、同時に、どの通貨ペアでトレードしたら良いのか、と言う問題も起きてくるのではないでしょうか。
通貨ペアには、流通量やボラティリティ、またはドルを含む通貨ペアか合成通貨(クロス円などを含む)かなど、いくつかの判断基準があります。それらの特徴や、通貨ペアの成り立ちを知ることで、トレードの目的にあった通貨ペアを選べるようになるということですね。
そこで本記事では通貨ペアの見方や特徴、そして初心者でも取引しやすいおすすめの通貨ペアなどを、詳しく解説していきたいと思います。
通貨ペアの見方
まず最初は、通貨ペアの見方など、取引に役立つ基礎知識をおさらいしましょう。
通貨ペアは「ベース通貨/クオート通貨」の組み合わせでできている
通貨ペアは、文字通り2つの通貨の組み合わせでできています。しかし、USD/JPY(米ドル/円)と言う通貨ペアはあっても、JPY/USD(円/米ドル)と言う通貨ペアがないように、2つの通貨を組み合わせれば何でも良いというわけではありません。
通貨ペアを構成する左右の通貨には、それぞれ役割と名前があり、左に表記される通貨は「ベース通貨(基軸となる通貨)」、右に表記される通貨は「クオート通貨(決済に使う通貨)」と呼ばれます。米ドル/円の場合は、米ドルがベース通貨、円がクオート通貨ですね。
FXの取引で米ドル/円を買う場合、売買の流れとしては「米ドルを買って円を売る」と言う形になります。逆に売りの場合は「米ドルを売って円を買う」と言う形ですね。
通貨ペアとチャートの見方
MT4などでチャートを開くと、縦軸にはレートが表示され、横軸には時間が表示されています。レートは、ベース通貨の価値をクオート通貨で表しています。
上のチャートは米ドル/円ですが、この場合は「1ドル=何円か?」が縦軸に表されていますね。
レートが上昇していると言うことは、ベース通貨の価値が上がり、クオート通貨の価値が下がっていることを意味します。いわゆる「円安/ドル高」ですね。反対に、レートが下降している場合は、ベース通貨の価値が下がり、クオート通貨の価値が上がっている状態(円高/ドル安)です。
小数点以下の桁数とpipsの関係
通貨ペアの見方に付随して、レートの桁数とpips(ピップス)の関係もおさらいしましょう。
初心者トレーダーを混乱させる要素の1つに、通貨ペアごとのレートの桁数の違いがあるのではないでしょうか。例えば、米ドル/円などのクロス円通貨ペアでは「123.456」のように、小数点以下は3桁で表記されることが一般的です。しかし、ユーロ/米ドルなどのドルストレートなどでは「1.23456」のように、小数点以下は5桁で表記されますね。
1pipsは「その通貨の最小単位の100分の1」となっているため、例えば円の場合は最小単位である1円の100分の1=0.01円=1銭が1pipsとなります。つまりクロス円の場合は小数点第2位の変動が1pipsの基準になるということですね。100.010円から100.020円への変動がちょうど1pipsの上昇となります。
一方で米ドルの場合は、最小単位が1セントとなっており、その100分の1=0.01セント=0.0001ドルが1pipsとなります。つまりドルストレートなどの小数点以下が5桁の通貨ペアの場合は、小数点第4位の変動が、1pipsの基準ということですね。1.00010から1.00020への変動が1pipsの上昇ということです。
pipsについてのより詳細な説明や計算方法、便利な計算ツールについては下記で詳しく紹介しています。
クオート通貨が違えば損益も変わる
通貨ペアに関係して分かりにくいことの1つに、通貨ペアごとの1pipsの損益の違いがあるかも知れません。
例えば、口座通貨が円でクロス円通貨ペア(〇〇/JPYの通貨ペア)を取引した場合、クオート通貨(決済通貨)が円のため、取引ロットとpipsによる損益は常に一定です。
しかし、同じ条件でユーロ/米ドルを取引した場合、クオート通貨が米ドルのため、損益は米ドルと円の為替レートが関係してきます。そのほか、米ドル/スイスフランや、ユーロ/ポンドなどもクオート通貨が異なるので、それぞれの1pipsの価格は異なり、さらに円との為替レートにより損益は変わります。
pipsの損益が同じなのに金額による損益が違う場合、クオート通貨の違いにも注目してみてくださいね。
通貨ペアはそれぞれに特徴がある
取引する通貨ペアを選ぶ際は、通貨ペアごとの性質や特徴を知ることで、失敗を未然に防ぎ、自分の取引に合った通貨ペアを選択することができます。ここからは、通貨ペアが持つ特徴について説明していきたいと思います。
流通量の違い
通貨ペアは、市場での流通量がそれぞれで大きく異なります。まずは、2019年の通貨ペアの流通量について、国際決済銀行の発表に基づくランキングを見てみましょう。
ランキング | 通貨ペア | シェア率 |
1 | ユーロ/米ドル | 24.0% |
2 | 米ドル/円 | 13.2% |
3 | ポンド/米ドル | 9.6% |
4 | 豪ドル/米ドル | 5.4% |
5 | 米ドル/加ドル | 4.4% |
6 | 米ドル/中国元 | 4.1% |
7 | 米ドル/スイスフラン | 3.5% |
8 | 米ドル/香港ドル | 3.3% |
9 | ユーロ/ポンド | 2.0% |
10 | 米ドル/韓国ウォン | 1.9% |
11 | ユーロ/円 | 1.7% |
「ユーロ/米ドル」は、最も主要な市場である欧州とアメリカの通貨からなるペアであり、取引量は全体のおよそ4分の1を占めます。その後は「米ドル/円」や「ポンド/米ドル」が続き、さらに資源国通貨を含む「豪ドル/米ドル」や「米ドル/加ドル」などが続く形ですね。
取引量が多い通貨ペアには、多くの資金が集まります。それは流動性の増加によるスプレッドの狭さや、値動き自体の安定につながるため、取引のしやすさの点で有利に働くと言えるでしょう。
ボラティリティの違い
FXでのボラティリティは、レートの変動幅の度合いを示す言葉として使われます。ボラティリティの大きい通貨ペアとしては、ポンドを含むものが有名でしょう。
例えば、2020年の第2週から第3週では、新型コロナウイルスの影響もあって多くの通貨ペアで激しい値動きが見られました。その2週間での最高値と最安値の実測値を、主要3通貨ペアで比較してみたいと思います。
変動幅(pips) | |
ユーロ/米ドル | 約853pips |
米ドル/円 | 約1,032pips |
ポンド/米ドル | 約1,782pips |
実際のチャートを見てみましょう。
ユーロ/米ドルとポンド/米ドルの週足チャートですが、同じような2本の陰線に見えても、ポンド/米ドルはユーロ/米ドルのおよそ2倍の値幅を作っています。
ボラティリティの大きい通貨ペアは、値幅を得やすいメリットがありますが、その分損切り幅が大きくなる場合もあるため、実際に取引する場合は注意が必要です。
スワップポイントの違い
スワップポイントとは、ペアを構成する通貨がそれぞれ持っている金利差の調整分のこと。高金利通貨と低金利通貨の通貨ペアの場合、スワップポイントも大きくなる傾向があります。
スワップポイントも、通貨ペアを見る際のポイントとしては重要と言えるでしょう。為替差益を狙うトレードの場合は、流通量が大きい通貨ペアを選ぶ場合が多いため、自然とスワップポイントによる影響は小さくなります。
反対に、スワップポイントでの利益を狙うトレードの場合は、必然的に流通量が少ない通貨ペアを取引することになります。デイトレードのようなスタイルで為替差益を狙うことは難しく、長期保有を前提にスワップポイントを狙うスタイルが基本になりますね。
スワップ狙いのトレードにいける注意点や、海外FX業者のスワップポイント比較、高スワップで稼ぎやすいおすすめ業者については下記で詳しく紹介しています。
ドルストレートと「米ドルを含まない」合成通貨について
通貨ペアは、大きく分けて2つの種類があります。「米ドルを含む通貨ペア」と「米ドルを含まない通貨ペア」です。このうち「米ドルを含む通貨ペア」は「ドルストレート」と呼ばれており、具体的には、「ユーロ/米ドル」「米ドル/円」「ポンド/米ドル」などですね。通貨ペアの流通量ランキング上位の通貨ペアは、ほとんどがドルストレートになります。
米ドルは基軸通貨と言われ、世の中に数ある通貨の中で、最も流通量が多く、影響力が大きく、そして基軸通貨のためのいくつかの条件を満たした、取引の基本となる特別な通貨。したがって、FXにおいても、このドルストレートを選択することが、最も取引しやすいと言えるでしょう。
一方「米ドルを含まない通貨ペア」とは、いわゆるクロス円などの「ユーロ/円」「ポンド/円」、またはユーロクロスと言われる「ユーロ/ポンド」などのこと。これら米ドルを含まない通貨ペアは、合成通貨と呼ばれます。合成通貨は、文字通り通貨ペアを合成した通貨ペアで、例えば「ユーロ/円」の場合は、「ユーロ/米ドル」と「米ドル/円」からなっています。
この中で特にクロス円は、円を含む通貨ペアのため、FX初心者の方にとっても何となく親近感がわく通貨ペアかも知れません。しかし実は、やや玄人好みのクセの強い通貨ペアでもあるのです。なぜなら合成通貨は、流通量自体の少なさとともに、元となる2つの通貨ペアの影響を受けやすい特徴があるためですね。
例えば、「ユーロ/米ドル」と「米ドル/円」の方向が揃わない場合、「ユーロ/円」の値動きは難しくなる傾向にあります。しかし、元となる2つの通貨ペアが同じ方向を向くような場合、合成通貨は大きなボラティリティを見せることがあります。
合成通貨は、「普段は難しいけど、当たれば大きい」のような性質があることは、知っておいて良いかも知れませんね。
トレードスタイル別のおすすめ通貨ペア
ここまで、通貨ペアの見方や特徴について説明してきました。最後に、トレードスタイル別のおすすめ通貨ペアについて見ていきましょう。
初心者でも取引しやすい通貨ペア
初心者でも取引しやすい通貨ペアとは、具体的には「テクニカル分析を始め、各種分析が働きやすい通貨ペア」と言えます。イレギュラーな値動きが少ない、と言っても良いかも知れませんね。
その意味で取引しやすい通貨ペアは、以下の3つと言えるでしょう。
- ユーロ/米ドル
- 米ドル/円
- ポンド/米ドル
これら3つの通貨ペアは、流通量が多く値動きが比較的安定していて、流動性が高くスプレッドも狭いことが特徴です。これからFXを始める方は、この3つからお好きな通貨ペアを見てみると良いのではないでしょうか。
スキャルピング向きの通貨ペア
スキャルピングは超短期的な値動きを狙った取引方法なので、基本的にはテクニカル分析が働きやすい通貨ペアで取引した方が良いでしょう。
スキャルピングの場合も、やはり「ユーロ/米ドル」「米ドル/円」「ポンド/米ドル」の主要3通貨ペアがメインになりますが、その他では、流通量の多い豪ドル、加ドルなどのドルストレートや、相場状況によってはクロス円を候補に挙げても良いですね。
スワップポイントを狙いやすい通貨ペア
スワップポイントで稼ぐには、高金利通貨を含む通貨ペアを狙う必要があります。
高金利通貨として有名なのは、主に以下の3つ。
- トルコリラ (TRY)
- 南アフリカランド(ZAR)
- メキシコペソ(MXN)
これらの通貨と、米ドルやユーロ、そして円などを組み合わせた通貨ペアが、スワップポイントを狙いやすい通貨ペアになります。
取引に向いていない通貨ペア
海外FXでは概ね50種類を超える通貨ペアで取引が可能ですが、選択肢に挙げられる通貨ペアは、ごく一部と言っても過言ではありません。流通量が少なく為替差益を狙いにくい割には、スワップポイントでもうまみがない通貨ペアも多く含まれます。特別な理由がない限り、そうした通貨ペアに手を出す必要はないでしょう。
まとめ
FXにおいて、取引しやすい通貨ペア・自分と相性の良い通貨ペアを見つけることは非常に重要です。それだけで勝率や損益が大きく変わることもありますし、取引する通貨ペアによってはトレードスタイルなども変化していくでしょう。
基本的な通貨ペアの特徴を知るだけでも、FX取引に活かせることはたくさんありますので、通貨ペア選びに困ったら、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
海外FX業者の取扱通貨ペアの比較や取扱通貨ペアが多いことによるメリットなどは下記で詳しく解説しています。
取扱通貨ペアの多さを含め、複数のポイントに着目した海外FX業者の総合ランキングは下記の記事をどうぞ。
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