海外FX業者の口座を開設する際に考えることが、スタンダードな「STP口座」とスプレッドが狭い代わりに取引手数料が発生する「ECN口座」のどちらを利用するかということ。一般的にはボーナスなどの特典があり手数料もないSTP口座を利用することが多いですが、手数料を入れてもトータルの取引コストの安さではECN口座が優れていることも多く、スキャルピングトレーダーなどはECN口座の利用機会が多いですね。
そこで今記事では、ECN口座の特徴と利用するメリットなどを解説。さらに、ECN口座を用意している8つの業者について、手数料の安さを軸に各業者を比較・ランキングしていきたいと思います。
ECN口座とSTP口座の違いやそれぞれのメリット・デメリットは下記にまとめています。
また海外FXでスキャルピングをする際に重視すべきポイントやおすすめ業者は下記で詳しく解説していますので、よければ参考にしてください。
ECN口座の概要とメリット
ECN口座とは
ECN口座とは、いわゆるECN方式による取引が可能なFX口座のことですね。ECNとは、Electric Communications Network(電子取引所)の頭文字をとった略称であり、ECN取引では、トレーダーの注文はインターバンク市場に直接を流れ、自動的にマッチングされる仕組みとなっています。
STP取引では最適なレートを提示した金融機関をFX業者が指定することで売買が成立しますが、ECN取引ではFX業者が注文に関わることがありません。その点で、非常に公正で透明性の高い仕組みとなっている点が特徴と言えるでしょう。
ECN口座のメリット
ECN口座を利用するメリットとしては、主に以下の4点が挙げられます。
スプレッドが狭い
ECN取引では、トレーダーの注文は直接インターバンク市場に流れ、スプレッドにFX業者の利益が上乗せされることはありません。そのためSTP取引に比べて、スプレッドが狭くなっています。
一方で、FX業者には注文をインターバンク市場に仲介してもらう「手数料」が発生するため、実質的な取引コストは「スプレッド+手数料」で計算する必要があります。
※STPもECNもNDD(ノーディーリングデスク)方式の中での仕組みであり、国内FX業者が採用するような相対取引=DD(ディーリングデスク)方式ではありません。そのためECN方式であっても、DD方式のように極端に狭いスプレッドにはなりません。
DD方式とNDD方式の違い、それぞれのメリット・デメリットについては下記で詳しく解説しています。
取引の透明性が極めて高い
ECN取引ではFX業者は、トレーダーの注文をインターバンクに仲介するのみです。そのため、不正なレート操作や約定拒否(リクオート)は存在せず、透明性の高さが確保されています。同じNDD方式のSTP口座も、DD方式と比べれば取引の公正さ・透明性は高いですが、ECN口座の場合はそれを超えて透明性が極めて高いと言えますね。
板情報が閲覧可能
ECN口座の場合、cTraderなどの板情報に対応した取引プラットフォームを使えば、インターバンク市場に集まっている注文を板情報として常時閲覧できます。市場への注文の集まり具合を把握することができるため、取引時の大きな判断材料になりますね。
高機能取引プラットフォームcTraderの特徴やMT4との違い、メリット・デメリットは下記にまとめています。
約定力が高い
ECNでは買い手と売り手の注文価格が一致した時に取引が成立するため、そもそも約定拒否という概念が存在しません。もちろん約定力の高さは取引方式だけでは決まらず、ブローカーの設備など多数の要因に左右されますが、ECN口座は少なくとも意図的に約定を操作することはできないという点で、高い約定力が期待できます。
手数料とスプレッドの関係
前述したとおり、ECN口座においてはスプレッドがSTP口座に比べて狭い分、業者に対して取引手数料が発生します。つまり、取引コストを計算する場合、単純にスプレッドだけを見ていればいいのではなく、スプレッドに手数料を加えた数値を算出する必要があるというわけですね。
通常、スプレッドは「pips」という単位を使って表されます。「pips」とは、FX取引における異なる通貨単位を共通化して表す単位であり、その通貨の最小通貨単位の100分の1が「1pips」に相当します。
つまり、「円」であれば最小通貨単位は1円であるため、「1pips=0.01円(1銭)」ということになりますね。「ドル」であれば最小通貨単位は1セントであるため、「1pips=0.01セント=0.0001ドル」ということになります。
そして手数料を取引コストとして考えた場合、スプレッドと同じようにpipsに換算する必要があります。例えば【取引単位:10万通貨、手数料:往復1ドル】の場合で考えてみましょう。手数料が往復1ドル/1lot(10万通貨)ということは、1通貨あたり1ドル÷10万で0.00001ドルとなり、pipsに変換すると0.1pipsとなるわけです。
それでは、具体的にECN口座の取引コストを計算してみましょう。
【スプレッド:0.3pips、手数料:片道4ドル、取引単位:10万通貨】の場合
取引コスト=スプレッド+手数料
=0.3pips+(4ドル×2÷10万)pips
=0.3pips+0.8pips=1.1pips
となりますね。
このように本当の取引コストを算出する場合、手数料をスプレッド換算してトータルで確認することが必要です。
ECN口座の取引手数料が安い海外FX業者ランキング
ここからはECN口座を用意している海外FX業者の中から、手数料が安いブローカーを比較しランキング形式で紹介していきたいと思います。
ECN口座のある8業者の取引コストと基本スペックを比較
まずは各ブローカーの平均スプレッド、取引手数料を含めた口座の基本スペックを一覧で比較しておきたいと思います。
業者 | 口座名 | スプレッド※1 | 手数料 | 最低入金額 | 最大レバレッジ | ロスカット水準 |
TradersTrust | プロ口座 | 0.4pips (1.0pips) | 往復手数料6USD/1lot=0.6pips | 200USD | 500倍 | 20%以下 |
VIP口座 | 0.4pips (0.7pips) | 往復手数料3USD/1lot=0.3pips | 20,000USD | 200倍 | 50%以下 | |
Tradeview | cTrader口座 | 0.2pips (0.7pips) | 往復手数料5USD/1lot=0.5pips | 1,000USD | 400倍 | 100%以下 |
ILC口座 | 0.2pips (0.7pips) | 往復手数料5USD/1lot=0.5pips | 200倍 | |||
Axiory | ナノスプレッド口座 | 0.3pips (0.9pips) | 往復手数料6USD/1lot=0.6pips | 200USD | 400倍 | 20%以下 |
FBS | ECN口座 | 0.4pips (1.0pips) | 往復手数料6USD/1lot=0.6pips | 1,000USD | 500倍 | 20%以下 |
TitanFX | ブレード口座 | 0.3pips (1.0pips) | 往復手数料7USD/1lot=0.7pips | 200USD | 500倍 | 20%以下 |
LandFX | ECN口座 | 0.7pips (1.4pips) | 往復手数料7USD/1lot=0.7pips | 2,000USD | 500倍 | 30%以下 |
HotForex | ZERO口座 | 0.7pips (1.5pips) | 往復手数料8USD/1lot=0.8pips | 200USD | 500倍 | 20%以下 |
XM | XM ZERO口座 | 0.1pip (1.1pips) | 往復手数料10USD/1lot=1.0pips | 100USD | 500倍 | 20%以下 |
GemForex | ノースプレッド口座 | 0.3pips (0.3pips) | なし | 3,000USD | 1,000倍 | 20%以下 |
※1:USD/JPYの平均スプレッド、カッコ内は手数料込みのスプレッド
業者ごとにスプレッド・取引手数料が様々であることがわかりますね。スプレッドが狭くても手数料次第では実質の取引コストが高くなることもありますし、その逆もありえます。今回は手数料の安さをメインにランキング化していますが、実際の取引コストで比較する場合はスプレッド+手数料で考えるようにしましょう。
業者別/口座別/通貨ペア別の実際の取引コスト比較は下記の記事にまとめています。
TradersTrust
TradersTrustは、2018年に日本向けの新法人を設立しサービス拡大している業者で、圧倒的な信頼感と安全性で人気を集めています。そんなTradersTrustが提供するECN口座が、プロ口座とVIP口座の二つ。
このうち特筆すべきはやはりVIP口座ですね。スプレッドの狭さもさることながら、往復手数料が3ドルというのは海外FX業者の中でも最安です。ただ最低入金額が20,000ドルと非常に高く設定されており、利用のハードルはやや高い口座と言えるでしょう。口座スペックに関しても最大レバレッジ200倍、ロスカット水準50%以下と、海外FXとしてはやや物足りなく感じるかもしれません。
プロ口座に関しては、スプレッドはVIP口座と同じものの、往復手数料が6ドル発生するため、取引コストとしてはやや高くなります。代わりに最低入金額が200ドルと、比較的ハードルは低くなっていますね。最大レバレッジは500倍、ロスカット水準は証拠金維持率20%以下となっており、標準的な海外FX業者の基本スペックとなっています。
TradersTrustの全体的な評判やメリット・デメリットは下記にまとめています。
Tradeview
Tradeviewは2004年設立の中堅ブローカーであり、「高い約定力」「安全性の高い顧客資産管理」などで安心して利用できる業者の一つ。ECN口座としては、取引プラットフォームが異なるcTrader口座とILC口座の二つが用意されています。
どちらの口座もスプレッドは業界最高水準レベルに狭く、さらに往復手数料も5ドルとかなり安いほうですので、トータルコストはかなり抑えることができますね。特にcTrader口座については、スキャルピング取引においてMT4よりも優れたパフォーマンスを発揮する取引プラットフォーム「cTrader」が採用されており、まさに取引コストが重要になるスキャルピングトレーダー向きの口座と言えます。
ただし、この二つの口座は最低入金額が1,000USD、最大レバレッジはcTrader口座が400倍、ILC口座が200倍、ロスカット水準は100%以下となっているため、利用のハードルはやや高く、ハイレバレッジな海外FXに慣れていると基本スペックも物足りないと感じるかもしれません。
Axiory
Axioryは2013年から運営を開始した業者で、「信託保全制度」を採用していることから資産の安全性は抜群であり、日本語情報の質と量で日本人から信頼の高い業者の一つですね。
ECN口座としてはナノスプレッド口座を提供していますが、ドル円平均スプレッドは0.3pips、往復手数料は6ドルとなっており、トータルコストは0.9pipsです。基本スペックは最低入金額が200ドル、最大レバレッジ400倍、ロスカット水準20%以下と、総合的に見ればTradersTrustのプロ口座に次ぐ、優れた口座と言えますね。
またナノスプレッド口座は、TradeviewのcTrader口座同様、取引プラットフォームに「cTrader」を採用しています。その約定力の高さや複数ポジションの同時一括決済機能などは非常に便利で、Tradeviewと同じくスキャルピングトレーダーからの人気も高いですね。
FBS
FBSは2009年に創業し、新規顧客に向けてのプロモーションに力を入れている業者です。入金ボーナスや口座開設ボーナスが豪華なことで有名ですね。
FBSが備えるECN口座では、ドル円平均スプレッドが0.4pips、往復手数料6ドルでトータルコストは1.0pips。最低入金額は1,000ドルと少し高めではありますが、最大レバレッジは500倍となっており、ECN口座の中ではハイレバレッジ取引に向いた口座と言えるでしょう。また、ロスカット水準も20%と低めになっているので、強制ロスカットの心配があまりないところも魅力的ですね。
FBSの全体的な評判やメリット・デメリットは下記にまとめています。
TitanFX
2014年にサービスを開始したTitanFXは、低コストと高約定力が高評判となり、XMと並んで日本人から人気のある業者です。
そんなTitanFXが、ECN口座として用意しているのがブレード口座。ブレード口座のドル円平均スプレッドは0.3pips、往復手数料は7ドルとなっており、そのトータルコストは1.0pipsです。最低入金額が200USD、最大レバレッジ500倍、ロスカット水準20%以下であり、取引コストではTradersTrustのプロ口座に及ばぬまでも、基本スペックでは全く引けをとらない優良口座と言えるでしょう。
TitanFXの全体的な評判やメリット・デメリットは下記にまとめています。
LandFX
LandFXは、スプレッド幅が広がりがちな海外FX業者の中でも、国内FX業者と同じレベルで狭いスプレッド幅を提供することで人気を集めています。
LandFXのECN口座は、ドル円平均スプレッドが0.7pips、往復手数料7ドルと、トータルコストでは1.4pipsとなります。最低入金額が2,000ドル~と、他の業者と比べるとやや高くなっていますが、最大レバレッジ500倍、ロスカット水準30%以下ということで、ハイレバレッジ取引可能なECN口座となっています。
LandFXの全体的な評判やメリット・デメリットは下記にまとめています。
HotForex
運用歴9年以上、登録ユーザー数は130万を超え、その口コミ評判の高さが特徴の中堅海外FX業者HotForex。
ECN方式の口座としてはZERO口座があり、ドル円平均スプレッド0.7pips、往復手数料は8ドルで、トータルコスト1.5pipsとなっています。口座の基本スペックとしては、最低入金額200ドル、最大レバレッジ500倍、ロスカット水準は20%以下と、いずれも他の優良口座と同レベルと言えますね。
HotForexは世界最大級の口コミサイト「FPA」で多数の高評価レビューが寄せられる信頼された業者です。出金拒否の実例などもないため、安心して取引できる口座と言えるでしょう。
HotForexの全体的な評判やメリット・デメリットは下記にまとめています。
XM
2009年からサービスを開始して以来、日本人トレーダーの口座開設数ダントツ1位の圧倒的人気を誇るXM。
そんなXMが提供するECN口座が、XM ZERO口座です。この口座では、スプレッドはドル円平均スプレッド0.1pipsと非常に狭いですが、そのぶん往復手数料が10ドルと、他の業者よりもやや高めに設定されていますね。他の通貨ペアにおいてはもう少しスプレッドも広いため、トータルの取引コストはどうしても高めになってしまいます。
ただ最低入金額が100ドルと、他海外FX業者に比べて低い点はメリットで、小資金からECN方式の口座を利用したいトレーダーにとっては魅力的ではないでしょうか。最大レバレッジ500倍でロスカット水準20%以下というスペックもECN方式の口座としては高水準と言えます。
XMの全体的な評判やメリット・デメリットは下記にまとめています。
番外編:GemForex
2014年からサービス提供を開始したGemForexは、期間限定の200%入金ボーナスをはじめとした「圧倒的なボーナスキャンペーン」を実施していることで人気の業者です。
GemForexはおそらくDD方式を採用した業者のため、ECN取引可能な口座は存在しませんが、それに相当する口座としてノースプレッド口座というものを用意しています。こちらはDD方式ということで、ドル円平均スプレッドが0.3pipsと非常に狭い上、驚きの手数料無料も実現。取引コストという面から言えば、まさに格安とも言える口座ですね。
さらに最大レバレッジも1,000倍と、これまた随一の大きさを持っており、ECN取引ではないということにこだわらなければ、取引コスト・スペック共に非常に優秀な口座と言えます。
GemForexの全体的な評判やメリット・デメリットは下記にまとめています。
まとめ
ECN口座における取引コストを考えた場合、スプレッドだけでなくその手数料にも注目することが重要ですね。いくらスプレッドが狭くても取引手数料が高いと、トータルコストも高くなってしまいます。
スプレッドはタイミングや通貨ペアによって変動することも多いため、どの海外FX業者が優れているか、というのは一概に言い切ることができません。そういう意味では、固定のコストとも言える取引手数料の安さに着目して、海外FX業者を選ぶというのも一つの選択肢ではないでしょうか。
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