海外FX業者で口座を開設する際に、「口座通貨を何にするか」ということで悩む人も多いのではないでしょうか。国内FXの場合、口座通貨は円建て一択ですが、海外FXでは円をはじめ、米ドル・ユーロなど他の選択肢も存在しますね。
一般的には、日本人トレーダーであれば円建てを選ぶことが多いでしょう。しかし、「ドル建て」のような外貨建て口座を選ぶメリット、全くないというわけではありません。
そこで本記事では、外貨建て口座の代表としてドル建て口座を例に、円建て口座との特徴比較やメリット・デメリットを紹介。ドル建て口座の利用をおすすめするトレーダーについても解説していきたいと思います。
外貨建て(ドル建て)口座・円建て口座について
海外FX口座を開設する際には必ず、口座で使用する基本通貨(ベース通貨)を設定します。通貨の選択肢としては日本円をはじめ、米ドルやユーロが多く、中には豪ドルやポンドといった外貨を選べるブローカーもありますね。
では、円建て口座にするのか、ドル建て口座にするのかで何が違うのかと言うと、口座の表示通貨単位と入出金時の通貨です。円建て口座であれば当然表示も円ですし、入出金も円で行うことになります。一方のドル建て口座の場合、表示はドルになりますし、入出金も基本はドルで行うということですね。
日本人トレーダーであれば、日常生活の中では「円」を使用している人がほとんどだと思いますので、必然的に海外FX口座の基本通貨も円建てにすることが多いと言えます。
ドル建て口座と円建て口座の特徴を比較
それでは実際、ドル建て口座と円建て口座にはそれぞれどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。ここからはドル建て口座と円建て口座の特徴を比較していきたいと思います。
表示の違い
ドル建て口座と円建て口座の違いとしてまず、「口座残高や利益表示額の単位」が挙げられます。ドル建て口座は当然ドルでの表示になりますし、円建て口座は円での表示になりますね。
そのため多くの日本人にとって、表示通貨がドルになるドル建て口座は、一目でいくらかということが直感的にわかりにくいと言えるでしょう。
口座残高や利益表示が全てドル単位となるため、都度、頭の中で円に換算する必要があります。もちろんドル表記であってもなんとなくの額は理解できる人が多いと思いますが、正確な数字は表示されているドルに、ドル円の為替レートを掛け合わせなければ算出することができません。為替レートは常に変動しているため、正確に計算する手間はやや面倒です。
一方で円建て口座にはこのようなことを気にする必要がありません。口座残高や利益表示額がもともと円のため、日本人にとってはわかりやすいと言えるでしょう。MT4やMT5などの取引プラットフォーム上に表示される金額の単位が全て円となるため、普段から円をよく使う日本人トレーダーであればなじみも深く、パッと見で分かりやすくなっています。
ただし、これはもちろん日本円と馴染み深いトレーダーの話。あまりいないとは思いますが、普段からドルを使うことが多いとう人にとっては、ドル建て口座の方が都合が良いと言えるでしょう。
為替の影響を受けるかどうか
ドル建て口座の場合、為替レート変動の影響を受けることになります。そのため円安になれば、ドル建て口座では為替差益が出るということになりますね。為替差益とは、「為替の変動によって生まれる利益」のこと。入出金時の為替によっては、この為替差益による利益が出ることがあります。
例えば入金時のドル円為替が1ドル=100円、出金時のドル円為替が円安になり1ドル=110円だった場合を考えましょう。この時為替差益としては、1ドルあたり10円ということになります。
仮に100ドルを入金しようとした場合、日本円として必要なのは100×100=10,000円(両替手数料は除く)。しかし、この100ドルを出金する際には、100×110=11,000円が引き出せることになります。この1,000円が為替差益というわけですね。つまり入金時よりも円安のタイミングを狙って出金すれば、何もしていなくても利益が出るということです。
しかし、当然ながら逆のパターンになることもあります。出金時に円安ではなく円高になってしまった場合、ドル建て口座では為替差損が出てしまいますね。先ほどの例で出金時に1ドル=90円と円高になっていた場合を考えましょう。この場合の為替差損は、1ドルあたり10円、10,000円を入金したのに9,000円しか出金できないということになります。
このようにドル建て口座にするということは、良くも悪くも為替の影響を受けるということになります。円安になれば何もしていなくても為替で利益を得ることができますが、逆に円高の影響でせっかく取引利益がマイナスになることもあり得るというわけですね。そのため、ドル建て口座における為替の影響は、メリット・デメリットが表裏一体で存在すると言えるでしょう。
一方で、円建て口座の場合はこのように為替レート変動の影響を考える必要がなく、取引に専念できます。外貨建て口座の場合、入出金は外貨で行われるため、入金時には円を外貨に、出金時には外貨を円に交換する必要がありましたが、円建て口座の場合、入出金は日本円にて行われるため、いつ入出金しようと1円は1円となるわけですね。
為替の影響を考えなければならない外貨建てでは、取引するために口座に入金したくても、為替レートが良くないために、入金を躊躇してしまうなど、取引自体のチャンスを逃す可能性もあります。しかし、円建て口座であれば、入出金時の為替レートを気にする必要がなく、取引に集中できる点は大きなメリットと言えるでしょう。
入出金の違い
ドル建て口座と円建て口座では、入出金時の対応にも違いがあります。それは「出金時に為替手数料がかかるか否か」ということと、「国内銀行送金が利用できるか否か」ということですね。
為替手数料
国内の銀行からドル建て口座へ入金するには、まず円をドルに交換する必要があります。この交換時に発生するのが為替手数料ですね。もちろん入金時だけでなく、ドルを出金した際にもドルから円に両替する為替手数料を銀行に支払わなければなりません。
以下の表は、主要銀行の手数料を一覧化したものです。
銀行 | 為替手数料 (1ドルあたり) | |
窓口 | ネット口座 | |
三菱UFJ銀行 | 1円 | 0.25円 |
三井住友銀行 | 1円 | 0.5円 |
みずほ銀行 | 1円 | 0.4円 |
住信SBIネット銀行 | ー | 0.04円 |
GMOあおぞらネット銀行 | ー | 0.02円 |
ジャパンネット銀行 | ー | 0.05円 |
楽天銀行 | ー | 0.25円 |
手数料が安いネットバンクであっても、少なくとも1ドルあたり0.02円、多くの人が利用しているメガバンクでは0.5円もの手数料が発生します。1,000ドルを円に交換する場合、20円〜500円の手数料が発生するということですので、入出金の機会が多い人にとっては大きなデメリットと言えますね。
一方で、円建て口座にはこのような為替手数料がかかりません。円建て口座の場合、持っている円を入金するだけなので、通貨を交換する必要がなく、もちろん為替手数料も発生しませんね。
国内銀行送金の利用可否
円建て口座であれば国内銀行送金による入出金が可能になります。
この国内銀行送金とは、日本国内の銀行口座を介して資金の移動が行える入出金方法のことですね。海外FX業者は、ほとんどの場合日本国内に銀行口座を持っていませんが、決済代行会社や収納代行会社のサービスを利用することで国内銀行送金を可能にしているというわけです。
国内銀行送金には、トレーダーの国内銀行口座⇔FX業者の利用する決済代行会社の国内銀行口座での資金移動になるため、入出金が非常にスムーズ。さらに手数料も安いという利点があります。円建て口座であれば、国内銀行送金が利用でき、入出金をスムーズかつ手軽に行えるという点はメリットと言えるでしょう。
ちなみに主要海外FX業者の中で、GemForex、Axiory、XM、BigBossの4業者が、国内銀行送金による入出金両方に対応してます。
国内銀行送金のメリットや入出金に対応するおすすめ業者は下記で詳しく紹介しています。
業者側の対応可否
海外FX業者によっては、円建て口座を開設できないということがあります。例えばHotForexはドル建てには対応していますが、円建てには対応していませんね。
一方ドル建て口座であればほとんどの海外FX業者で口座開設することが可能です。ドルは世界的な基軸通貨ですので、これは当然と言えば当然ですね。どんな海外FX業者でも口座開設が可能という点は、ドル建てならではのメリットと言えるかもしれません。
ただ現在は主要な海外FX業者の多くが円建て口座に対応しています。どうしても利用したい業者が円建てに対応していないということでもなければ、これはあまり問題とはならないでしょう。
ドル建て口座の利用をおすすめするトレーダー
取引利益のみでなく為替差益も狙っているトレーダー
為替の影響の部分でも説明したように、入金時と出金時の為替レート次第では為替差益が得られる可能性があります。円高のタイミングで上手にドル転し、円安のタイミングで出金できる自信があるトレーダーであれば、ドル建て口座を利用する価値があると言えるでしょう。
海外在住または外貨預金口座を持っているトレーダー
海外に在住している人や外貨預金口座を持っている人も、ドル建て口座を利用する価値がありますね。普段からドルを使っているトレーダーであれば、円とドルを交換する必要もありませんし、為替の影響も無視できます。逆に円建て口座にしてしまうと、為替影響と為替手数料が発生してしまうため、外貨ベースで資産を管理している人は外貨建て口座を使うようにしましょう。
まとめ
円建て口座と外貨建て口座でそれぞれメリット・デメリットが存在しますが、ほとんどの日本人トレーダーにとっては円建て口座がおすすめです。よほどの理由がない限り、外貨建て口座にするメリットはありませんので、基本的には円建て口座を開設するようにしましょう。
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