Tickmillは2015年より日本での運営を開始しており、海外FX業者としてはまだ新興業者と言えるブローカーですね。とは言え日本人向け法人が保有するセイシェル金融サービス機構 (FSA)のライセンスをはじめ、グループとしてはイギリス金融行動監督機構 (FCA)、キプロス証券取引委員会 (CySEC)と言った非常に信頼性の高い金融ライセンスを保有し、世界的には名の知れたブローカーです。
本記事では、そんなTickmillの魅力や特徴、メリット・デメリットに加え、Tickmillの利用をおすすめする相性の良いトレーダーなどについて具体的に紹介・解説いたします。
Tickmillの最大の魅力は制限が一切ない自由で柔軟な取引環境
Tickmillの最大の魅力とも言えるのが、取引環境に一切制限がないことですね。スキャルピングはもちろん、他の業者では禁止されることが多い、異業者間の両建てやアービトラージ取引なども許可されており、非常に自由で柔軟な取引が可能です。
あらゆる両建てが許可されアービトラージも可能
Tickmillではあらゆる両建てに加え、アービトラージも認められています。
両建て取引とは、同一通貨ペアの「買い・売り」を別々にポジションする取引手法のことですね。両建てする方法としては「同一口座内」、「複数口座間」、「異業者間」の3つがありますが、このうち同一口座内以外の両建てについては、下記のように多くの業者が禁止している中で、Tickmillでは許可されています。
【両建て取引可否】
業者名 | 口座内両建て | 口座間両建て | 業者間両建て |
Tickmill | 〇 | 〇 | 〇 |
XM | 〇 | × | × |
FBS | 〇 | △ | 〇 |
HotForex | 〇 | × | × |
TitanFX | △ | △ | △ |
LandFX | 〇 | × | × |
Axiory | 〇 | 〇 | 〇 |
iForex | 〇 | × | × |
※△:ゼロカット制度による利益狙いは不可
異業者間で両建てにするということは、業者Aで買いポジションをとったのであれば、業者Bでは同一通貨ペアの売りポジションをとるということです。例えばTickmillでドル円の「買い」ポジションを保有しつつ、Axioryでドル円の「売り」ポジションを保有すると言った形ですね。
つまり、同じ通貨ペアの「買い・売り」ポジションを反対方向に同時に持つことになります。両建て保有を行うと、取引最中の為替の値動きが相殺されることになり損益が発生しなくなるため、一見無意味なように感じますね。しかし、異業者間両建てに”アービトラージ”という取引手法を併用することで、大きなメリットが発生します。
アービトラージは、「サヤ取り」・「裁定取引」とも言い、同一商品にもかかわらず業者によって価格差が発生した時に、安い方から買い、高い方に売るという取引方法。FXでのアービトラージには、以下の2つの利用方法があります。
①為替レートを利用したアービトラージ
為替レートが安い業者で買いポジション、為替レートの高い業者で売りポジションをとることで利益を得ます。
【例】
業者Aのドル円レート:100円/ドル
業者Bのドル円レート:100円5銭/ドル
このとき、業者Aで買い・業者Bで売りを行うことで、レートの変動による損益は相殺されるので、業者間で発生する一時的なレート差=5銭、を利益として獲得することができます。
②スワップポイントを利用したアービトラージ
一般的に、FX取引でのアービトラージと言えば、こちらのスワップアービトラージを指します。為替レートと同様に、業者間で発生したスワップポイントの差を利用して利益を得る取引のことで、スワップロングの高い業者で買いポジション、スワップショートの高い業者で売りポジションを取ります。
【例】
業者Aのドル円
スワップロング:3
スワップショート:-4
業者Bのドル円
スワップロング:5
スワップショート:-6
このとき、業者Aで売り・業者Bで買いを行うことで、スワップポイントの差分5-4=1が利益になります。
つまり業者間両建てで為替変動の損益を固定した状態でアービトラージを行えば、理論上はリスクゼロで利益のみを獲得できるということになりますね(ポジションの保有タイミングやスワップの変動も影響するため、実際は100%稼げるわけではありません)。このようなことを防ぐためにほとんどのFX業者がアービトラージを禁止しています。
ところが、Ticmillは業者間両建て、アービトラージまでをも認めており、この自由度の高さはトレーダーにとって大きなメリットと言えるでしょう。
秒スキャや高速スキャルピングEAによる自動売買も可能
Tickmillをはじめ海外FX業者の多くはスキャルピング取引を認めています。しかしスキャルピング自体を認めている業者でも、1分間の取引量を制限していたり、EAを使った超高速スキャルピングは禁止している業者もありますね。
一方でTickmillではあらゆるスキャルピングが認められています。ポジションの保有時間にも制限がなく、秒単位で超短期売買を繰り返す秒スキャや、高速スキャルピングEAを使ったシストレも可能というわけですね。もちろんTickmillの取引方式はNDD方式であり、約定拒否等もありません。まさにスキャルパーにとってこれ以上はない取引環境と言えるでしょう。
エントリー枚数・ストップレベル制限なし
Tickmillではエントリー枚数に制限がなく、取引ロット数を自由に設定できます。例えば主要海外FX業者であるGemForexでは、1口座におけるロット数は30Lotまでとなっていますが、このような上限はTickmillには設定されていませんね。
またストップレベル(指値や逆指値などの予約注文時に、現在レートから離して指定しなければならない最低限の値幅)の制限もなしです。例えばXMではUSDJPYのストップレベルが4pipsに設定されているため、ドル円レートが100円の場合、100.05円以上/99.95円以下にしか指値/逆指値を置くことができません。
このように、ストップレベルが高く設定されていると、注文可能な範囲が狭まってしまいますね。しかし、Tickmillではストップレベルの制限もなく、現在レートと同値での予約注文が可能です。
取引量・注文レートに制限がまったくなく、トレーダーの思い通りの取引が可能な点も、Tickmillの大きな魅力ですね。
Tickmillの特徴と評判 ~メリットとデメリット~
口座の基本スペックや特徴
Tickmillでは、プロ口座とクラシック口座、VIP ACCOUNT口座の3種類の口座が用意されています。まず、それぞれの口座の基本スペックを確認しましょう。
クラシック口座 | プロ口座 | VIP ACCOUNT口座 | |
取引方式 | STP | ECN | ECN |
最大レバレッジ | 500倍 | ||
ロスカット水準 | 証拠金維持率30% | ||
追証 | なし | ||
最低入金額 | $100 | $100 | $50,000 |
ロット単位 | 10,000通貨 | ||
最小取引単位 | 0.01lot | ||
往復手数料 | – | 4ドル/lot=0.4pips | 2ドル/lot=0.2pips |
最小スプレッド | 1.6pips | 0.0pips | 0.0pips |
取扱商品 | 通貨ペア:62種 CFD:15種 | ||
入出金方法 | 海外銀行送金 | ||
顧客資産管理 | 分別管理 | ||
取引ツール | MT4 |
VIP口座は口座残高が$50,000以上あるトレーダーでないと使用できないため、資金の少ない初心者トレーダーなどは、プロ口座かクラシックの二つから選択することになりますね。最大レバレッジやロスカット水準など基本的なスペックは同じなので、ECN取引ならプロ、STP取引ならクラシックという考えで選択すれば良いでしょう。
レバレッジ500倍でロスカット水準が証拠金維持率30%というのは、平均的な海外FX業者のスペックと言えますね。特別優れているという訳ではありませんが、特に気になるほどスペックが低いという訳でもありません。もちろん追証なしのゼロカットは採用されています。
特筆すべき点としては、ECN口座の往復手数料の安さでしょう。特にVIP口座の往復1ロットあたり2ドルというのは、数ある海外FX業者の中でも最安レベルです。ECN口座の取引手数料は一般的には5〜10ドル、安いと言われるTradeviewでも5ドルですので、かなりコストを抑えた取引が可能です。
他に入出金方法が海外銀行送金に限定されている点は、やや気になるポイントかもしれませんね。入金しても口座への残高反映に2~5営業日ほどのライムラグが発生しますし、5,000$以下の入金では手数料が4,000円ほどかかるなど、デメリットが多いです。国内銀行送金やbitwalletなど、より便利な入出金方法に対応した海外FX業者が多い中で、これはやや不便と言えるでしょう。
狭いスプレッド+安い取引手数料で取引コストはかなり安い
TickmillのECN口座は取引手数料が安いことに加え、スプレッドもかなりの狭さを実現しています。Tickmillと主要業者のECN口座におけるスプレッドを比較すると以下のようになりますね。
業者 | 口座名 | スプレッド※1 |
Tickmill | プロ口座 | 0.3pips (0.7pips) |
VIP ACCOUNT口座 | 0.3pips (0.5pips) | |
Tradeview | cTrader口座 | 0.2pips (0.7pips) |
ILC口座 | 0.2pips (0.7pips) | |
Axiory | ナノスプレッド口座 | 0.3pips (0.9pips) |
FBS | ECN口座 | 0.4pips (1.0pips) |
TitanFX | ブレード口座 | 0.3pips (1.0pips) |
LandFX | ECN口座 | 0.7pips (1.4pips) |
HotForex | ZERO口座 | 0.7pips (1.5pips) |
XM | XM ZERO口座 | 0.1pip (1.1pips) |
※1:ドル円の平均スプレッド、カッコ内は手数料込みのスプレッド
USD/JPYのスプレッドに関して言えば、XMやTradeviewより広いものの、他の業者と同等以上のレベルです。さらに手数料を考慮した場合、その取引コストはどのブローカーよりも安くなりますね。TickmillのECN口座、特にVIP口座は業界トップの取引コストを安さを実現しており、これは非常に魅力的と言えるでしょう。
ただし口座の基本スペックにも記載したように、VIP口座の利用には$50,000(約550万円)以上の入金が必要であり、これはなかなかのハードルの高さです。資金がそこまで用意できない、海外FX業者にそこまで資金を預けるのは怖いというトレーダーも多いと思いますので、その場合はやや取引コストは上がりますが、他の最安レベルと同等レベルのプロ口座の利用も検討しましょう。
平均約定スピード0.1秒と約定力は高い
TickmillはWEBサイト上で、平均約定スピード0.1秒を謳っており、約定スピード・約定力の高さをアピールしています。取引状況により多少変動はあるものの、平均して約定スピードが0.1秒代というのは、主要業者の中でもトップクラスと言えますね。
実際に利用してみても、ほとんどライムラグを感じることがありません。指標発表などのボラリティが高く注文が集中するようなタイミングでも、大きなスリッページは少ない印象です。Tickmillを利用するトレーダーはスキャルパーも多いと思いますが、この約定力は高さはスキャルピングとも非常に相性が良いため、大きなメリットと言えるでしょう。
親会社がFCA保有&FPAの口コミ評価も良く信頼性が高い
冒頭にも記載したように、Tickmillの運営会社であるTickmill Ltdは、セーシェルを拠点としており、FSAの金融ライセンスを保有しています。この金融ライセンス自体はそこまで信頼性の高いものではありませんが、日本の金融庁からの圧力回避のため、大手海外FX業者のXMやHotForexも日本人向け口座の管理に用いているライセンスですね。
さらに親会社であるTickmill UK Ltdは、イギリスFCA(英国金融行動監視機構)の金融ライセンスを取得しています。FCAは世界の金融ライセンスの中でも最も審査基準が厳しいライセンスであり、厳重な顧客資産の取引規定や破綻時に最大約1,000万円まで顧客資産が補償される仕組みとなっているため、非常に信頼性の高いもの。親会社の信頼性が認められていることから、子会社が運営するTickmillの信頼性もある程度担保されていると言えるでしょう。
また、世界最大規模の口コミサイトFPAでの評価が非常に高いことからも、Tickmillの信頼性は世界中のトレーダーに認められてることが分かります。2020年2月現在におけるTickmillのFPAの口コミ評価は、下記の通りレビュー数199で平均評価3.593。
平均評価の高さ・レビュー数の多さともに主要業者の中ではかなり優秀な部類であり、信頼性という面では特に心配のいらない安全な業者と言っても問題ありませんね。
新規口座開設ボーナスは30ドル
海外FX業者では新規に口座開設をするだけでボーナスがもらえる(未入金ボーナス)ことが多いですが、Tickmillでも口座開設時に30ドル分のボーナスが獲得できるキャンペーンを常時開催しています。
他のブローカーでは口座開設ボーナスが50ドル〜100ドルということが多いため、この30ドルという額はあまり豪華とは言えませんね。自己資金を使わずにお試しでトレードをするためのもの程度に考えておくのが良いでしょう。
ボーナス分の30ドルは出金することができず、ボーナスを使って得た利益のみ出金可能という点も、他の海外FX業者同様。ただTickmillの場合は30ドルボーナス専用口座の開設が必要なため、その点は注意しましょう。
充実の日本語サポート
海外FX業者を利用する上で大事なポイントと言えるのが、日本語によるサポートがしっかりと受けられるかどうかですね。特にFXのような資産の入金などを伴う金融取引においては、サポートを受ける上で言葉が伝わらないというのは致命的になりかねません。
Tickmillではトレーダーがサポートを受ける主な手段として、以下の3つを用意しています。
電話 | 月~金(7時~20時) |
メール | 24時間 |
ライブチャット | 月~金(7時~20時) |
日本語での対応はもちろん、問い合わせに対するレスポンスはかなり良く、日本人トレーダーにとっては安心して利用できるでしょう。また公式WEBサイト上の日本語対応もかなり整備されており、やや不自然さはあるものの和訳ツールで変換されたような違和感のある日本語ではなく、しっかりと意味の分かる日本語での表記となっています。
円建て口座は用意されていない
海外FX業者では口座のベース通貨として、ドル建てや円建てなど複数の通貨から選択できることが一般的です。そして日本人トレーダーであれば、ほとんどの人が円建て口座を選択していますね。
しかしTickmillでは現時点で円建て口座が用意されていません。利用可能なベース通貨はUSD(米ドル)、EUR(ユーロ)、GBP(ポンド)の3つに限定されており、これは日本人トレーダーにとってはデメリットと言えるでしょう。
ドルでの運用をおこなっていない場合、口座への入金のために外貨建てにせざるを得ませんし、資金自体が為替変動の影響を受けるため、入出金時のタイミングなども考える必要があります。さらに表示通貨単位が円ではなくドルやユーロになるため、直感的にわかりづらい・計算がめんどくさいという欠点もありますね。
今後日本人トレーダーの利用が増えてくれば、円建て口座が利用できるようになるかもしれませんが、現時点ではTickmillを利用するにあたり外貨建て口座を利用するしかありません。
海外FXでの外貨建て/円建て口座の違いやメリット・デメリット、どちらを選ぶべきかは下記で詳しく解説しています。
取引ツールはMT4のみ
FX取引における標準的な取引プラットフォームと言えばMT4ですね。EAやインジケーターも豊富に存在し、世界的なデファクトスタンダードと言える存在です。
もちろんTickmillもこのMT4には対応していますが、他の取引ツールに関しては残念ながら利用できません。他の海外FX業者ではMT4に加え、より高機能なMT5やスキャルピングと相性が良いcTraderが使えることも多いため、この点はややデメリットと言える部分でしょうか。
とは言え、まだまだMT4ユーザーの方が圧倒的に多く、他の取引ツールに対応していないからと言って大きく使い勝手が落ちるわけでもありません。どうしても利用したい取引プラットフォームがあるということでなければ、特に困ることはないでしょう。
顧客資産管理は信託保全ではない
Tickmillでは顧客資産の管理方法として、信託保全ではなく分別管理を採用しています。分別管理だからと言って必ずしも危険ということではありませんが、もしも業者が破産した場合には、トレーダーの資産が返ってこない可能性もあるということですね。
信託保全の義務がない海外FXでは分別管理を採用することは比較的一般的です。しかし、中には信託保全を採用している海外FX業者も存在しますし、分別管理に加えてAIG(AIG EUROPE LIMITED)などの保険をかけて顧客資産の補償を約束しているブローカーもあります。
そう言った点では分別管理のみのTickmillは、親会社の信頼性は高いものの、顧客資産には一定のリスクがあると言えますね。
分別管理と信託保全の違いや資産管理体制に優れたおすすめ業者は下記に詳しくまとめています。
Tickmillの利用をおすすめする相性の良いトレーダー
制限のない取引環境で自由かつ柔軟なトレードをしたいトレーダー
Tickmillでは取引ルールに制限されることなく、ほぼ自由にトレードを行うことができます。業者間両建てやアービトラージでリスクを抑えて確実に利益を狙う方法や、自動売買を駆使した超高速スキャルピングでの地道な利益獲得など、まさにその使い方は多岐に渡りますね。
他の業者では禁止されているような取引でも、Tickmillでは許可されているということも多く、そういう意味ではトレーダーにとって利益獲得のチャンスが多いと言えるでしょう。自由に取引したいトレーダーはもちろん、様々な取引手法を試してみたいという場合にも最適な業者と言えますね。
トータルコストを抑えたいスキャルピングトレーダー
スキャルピングトレーダーであればトータルコストをできる限り抑えて、なるべく利益幅を広げたいと考えるもの。そのようなトレーダーにとってもTickmillは最適ですね。Tickmillの2つのECN口座であるプロ口座とVIP口座では、業界最高水準のスプレッドの狭さと取引手数料の安さを実現しており、取引にかかるトータルコストを安くすることができます。
取引回数が多ければ多いほど、取引コストをいかに安くするかということが利益拡大の鍵となりますので、スキャルピングでなかなか利益をあげられないというトレーダーは、Tickmilの利用を検討してみましょう。
まとめ
入出金が海外銀行送金に限られる、円建て口座が用意されていない、という比較的大きなデメリットはあるものの、その取引コストの安さや制限のない自由な取引環境は、Tickmillならではの大きな魅力と言えますね。取引コスト最安を誇るVIP口座ほどではないものの、プロ口座でも十分その取引コストの安さは実感できるため、VIP口座の利用条件($50,000以上の入金)はハードルが高いという人は、プロ口座の利用も検討してください。
また口座開設するだけで30ドルの未入金ボーナスも獲得できるため、Tickmillの利用を検討している人は、本格的な利用の前にぜひこのボーナスを使ってお試しトレードをしてみましょう。
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