海外FX業者を選ぶ際には、「スプレッド」や「レバレッジ」を重視するトレーダーも多いのではないでしょうか。特にスキャルピングやデイトレを行う際には、これらは決して無視することができない要素ですね。しかしそれらに加え、「約定力の高さ」も海外FX業者選びの重要な要素と言えます。
そんな約定力の高さを測る指標のひとつとして、スリッページの発生頻度が挙げられますね。スリッページとは、サーバーの通信状態などによって注文のアンマッチで起こる、想定注文額と約定額のズレのこと。スリッページが起こると、買い注文の際には注文した時点よりも高い額で約定されてしまったりするなど、思わぬ損を被ります。つまり、スリッページは実質的な取引コストになってしまうため、スプレッドと同じくらい業者選定の重要な要素ということですね。
そこで本記事では、そんなスリッページの概要や発生する仕組みなどの基本的な知識から、スリッページが発生することによるデメリット、主要業者の比較やスリッページが発生しにくいおすすめの業者を紹介したいと思います。
スリッページについて
スリッページの概要
スリッページとは、取引における想定注文価額(注文したい値)と実際約定価額のズレのことを指します。俗に「注文がすべる」と表現されたりもしますね。
スリッページは、注文と約定のタイムラグによって発生するもので、FX業者の約定力に左右されます。そのため約定力がある(注文執行率が高く、約定スピードが速い)業者ほど、スリッページは発生しにくいと想定され、狙い通りの価格で取引できる優良業者と言えるでしょう。
スリッページが発生するとどのような事態になるのか、具体的な例で見てみると、例えばUSD/JPYの通貨ペア取引において、想定注文価額が110.00円、実際の約定価額が110.05円だった場合を想定します。この場合、0.05円のスリッページとしてが発生したことになりますが、仮に10万通貨の取引であれば、0.05×10万=5,000円の差が出るというわけですね。
約定した時点ではこのスリッページが有利に働くか不利に働くかはわかりませんが、少なくとも狙い通りの価格で注文ができなかったという点では、トレードの自由度を下げます。さらに取引量が多いトレーナーほど、スリッページの影響を大きく受けやすいため、少しのスリッページでも大きな損失につながる可能性もあるということは理解しておく必要がありますね。
スリッページ発生する原因
スリッページが発生する主な原因は、注文から約定までのタイムラグです。そしてこのタイムラグが発生する要員として挙げられるのが、主に以下の3点ですね。
- FX業者のサーバースペック
- 通信速度
- 提携しているLP(リクイディティプロバイダ)の数や質
まずサーバースペックについてですが、FX業者は常に世界各国のトレーダーから大量の注文を受けており、それらの注文をいかに捌けるかは、使用しているサーバーのスペックに左右されます。スペックの低いサーバーを使っている業者であれば、取引の活発な時間帯等では、サーバーの処理が間に合わず、トレーダーの注文と約定までにタイムラグが発生しやすくなります。
そしてサーバースペックが十分であっても、通信が遅延してしまうと意味がありません。通信速度が遅いと、「注文」という通信が届くまでに時間がかかってしまうため、当然タイムラグが発生してしまいますね。
この通信速度は、トレーダーやFX業者が使用している回線と、サーバーがどこに設置されているかという地理的な問題に起因します。インターバンク市場の金融機関が設置しているサーバー、FX業者が設置しているサーバー、トレーダーのサーバーのロケーションが近ければ近いほど、通信は早く伝達されるためタイムラグが発生しにくくなります。
さらに提携しているLP(リクイディティプロバイダ)の数や質も重要です。LPとは、FX業者に対して為替レートの元となる価格を提示する金融機関などのこと。つまりLPの数が多いFX業者ほど、提供される為替レートも多くなり、流動性が高まるということですね。流動性が高まると注文マッチングの可能性が高まりますので、高速約定につながります。
この他にも、DD方式であればFX業者の意図的な操作によるタイムラグ発生ということも考えられますが、ほとんどの海外FX業者でDD方式は採用されておらず、NDD方式による透明性の高い取引を採用しています。NDD方式のブローカであれば意図的なスリッページの発生はないと考えて良いでしょう。
DD方式とNDD方式の違いや、それぞれのメリット・デメリットは下記に詳しくまとめています。
スリッページが発生することによるデメリット
スリッページは、前述したとおり想定した注文価額と実際の約定価額のズレによって発生するものです。そしてこれは、トレーダーにとって思わぬ利益にもなる半面、大きな損失にもなる可能性もありますね。
例えばUSD/JPYで0.05円のスリッページが発生したと仮定して、これが買い注文だった場合は110.00円で買うつもりが、スリッページによって110.05円で買ってしまったことになります。このような場合、約定の時点で0.05円=5pipsの損がすでに発生していることになり、スリッページが実質の取引コストになってしまっていますね。
逆に売り注文だった場合、110.00円で売るつもりが、スリッページによって110.05円で売ってしまったことになります。この場合は5pips分の取引コストが浮いたことになり、有利に約定できたと言えるでしょう。
このように、買いポジションか売りポジションか、約定価額が注文価額に対して上振れか下振れかによって、そのスリッページが有利か不利かは変わります。一概に損を被るだけとは言えないかもしれませんが、どれだけ変動するかもわからないスリッページを見越して取引するというのは得策ではありません。できる限り狙い通りの取引をしたいものです。
特に、スキャルピングやデイトレといった取引量が多くなりやすいトレーダーにとっては、スリッページの発生率が高いと、想定した利益を獲得しにくくなるでしょう。スリッページは、損にも得にもなりえますが、不確定要素を孕んだ取引になってしまうという面で、大きなデメリットと言えるでしょう。
主要海外FX業者の注文執行率と約定スピードを比較
約定力が高ければそれだけスリッページが発生する頻度も少ないと言えますね。そこで約定力=注文執行率の高さと約定スピードの速さと定義し、主要な海外FX業者の約定力を比較すると以下の表のようになります。
注文執行率(%) | 平均約定スピード(秒) | |
XM | 99.92 | 0.306 |
AXIORY | 99.84 | 0.297 |
TitanFX | 99.98 | 0.391 |
LandFX | 98.22 | 0.179 |
FBS | 95.00 | 0.300 |
Traderstrust | 91.90 | 0.341 |
GemForex | 99.79 | 0.529 |
HotForex | 99.45 | 0.355 |
XMはさすがに海外FX業者の最大手ということで、注文執行率・約定スピード共に優秀な値ですね。また注文執行率で言えば、やはりスキャルパーから人気の高いAxioryやTitanFXのほか、GemForex、HotForexといったブローカーが99%以上の高さを誇っています。
平均約定スピードではLandFXが圧倒的なものの、注文執行率がやや低いのが気になる点ですね。日々大量の取引をするスキャルパー等にとっては、注文執行率が1%異なるだけで、非常に大きな影響を受けます。コンマ1の差が利益に大きく関わってくるため、注文執行率と約定スピードはセットで確認するようにしましょう。
約定力から見るスリッページが発生しにくいおすすめの海外FX業者3選
ここからは上記の注文執行率・約定スピードの比較表から、スリッページが発生しにくいと想定されるおすすめの海外FX業者を紹介していきたいと思います。
XM
2009年からサービスを開始したXMは、圧倒的な日本人トレーダーの口座開設数を誇る大人気海外FX業者ですね。そんなXMの注文執行率は99.92%、約定スピードは0.306秒となっています。
XMの注文執行率は、注文執行率No.1のTitanFXには及びませんが、主要業者の中でもトップクラスと言えるでしょう。注文が執行されない可能性は、1000回に1回にも満たない確率です。また、約定スピードはLandFX、AXIORYに次いで0.3秒台前半を叩きだしていますね。
XMは、注文執行率の高さと約定スピードの速さを兼ね備えています。スリッページが起きにくく、狙い通りの注文が成立する確率が高い、約定力に優れた業者と言えるでしょう。
XMの全体的な評判や特徴、メリット・デメリットは下記に詳しくまとめています。
AXIORY
AXIORYは2013年から運営を開始し、その透明性の高さから信頼の高い業者の一つですね。そんなAXIORYの注文執行率は99.84%、約定スピードは0.297秒となっています。
AXIORYの注文執行率は、TitanFXとXMに次ぐ第3位の高さを誇ります。注文が執行されない確率は、1000回に1回~500回に1回レベルと非常に少ないですね。また、約定スピードはLandFXに次ぐ第2位であり、若干ではありますがXMを凌ぐ速度を持っています。
サーバーをEQUINIX(エクイニクス)社のデータセンターに設置している点も大きなポイントと言えるでしょう。EQUINIX社と言えば、世界各国の多くの金融機関も利用する超巨大インフラ企業。地理的な通信遅延が起きにくい環境にあることも、約定力の高さに貢献していますね。
またAXIORYは公式サイト上に月ごとの約定スピード・スリッページ率を公開しており、非常に透明性・信頼性が高いブローカーと言えるでしょう。
AXIORYの全体的な評判や特徴、メリット・デメリットは下記に詳しくまとめています。
TitanFX
TitanFXは、XMやAXIORYと並ぶほど日本人トレーダーからの人気が高いFX業者の一つで、低スプレッドや高約定力が評判の業者ですね。そんなTitanFXの注文執行率は99.98%、約定スピードは0.391秒となっています。
TitanFXの特徴はなんといっても注文執行率の圧倒的な高さ。他の追随を許さない99.98%という高い確率は、注文が執行率されない可能性が5,000回に1回程度というレベルです。TitanFXは、多くのLP(リクイディティプロバイダ)と連携しており、価格提示をたくさん受けることができることから高い約定率を実現していますね。
約定スピードは0.3秒台後半ということで、他の業者と比較しても際立った速さではありませんが、業界随一の注文執行率の高さを勘案すると、スリッページの発生しにくい業者として評価できるでしょう。
TitanFXの全体的な評判や特徴、メリット・デメリットは下記に詳しくまとめています。
まとめ
スリッページが発生してしまうと、思わぬ取引コストになってしまい、せっかくのトレードも失敗してしまう可能性があります。そういう意味ではスリッページの発生頻度はスプレッドと同じくらい、海外FX業者を選ぶ際の重要な指標と言えますね。
スリッページがどれくらい発生するかということは公表されておらず、なかなか確認が難しいですが、約定率や約定スピードから推測することができますので、業者選びの際はこの辺りの数値も参考にしてみてください。
スリッページの発生頻度や約定力の高さを含め、様々なポイントで総合的に分析した海外FX業者ランキングは下記をご覧ください。
スキャルピングやデイトレ、スイングなどのトレードスタイル別のおすすめ業者は下記にまとめています。
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