海外FXを利用するにあたり気になることの1つが安全性。金融取引を行うということは自分の資産を一時的に預けるということですので、特に資金管理がどのようになっているかを確認することが非常に重要ですよね。資金管理の方法によっては、万が一の時にも自分のお金が返還されないということになりかねません。
資金管理の体制には分別管理と信託保全の2種類が存在し、国内FXでは完全信託保全が義務化されている一方、海外FXでは業者によって対応が異なります。そこで本記事では、分別管理と信託保全の仕組みや違い、人気海外FX業者の対応状況などについて解説していきたいと思います。
トレーダーの証拠金管理体制
分別管理と信託保全
FX業者に預けられた証拠金の管理体制には、大きく分けて分別管理と信託保全の2種類が存在します。
信託保全はトレーダー資金の管理を主に外部機関が行い、仮にFX業者が破綻しても返金される仕組みですね。一方、分別管理ではFX業者がトレーダーの資金を管理するため、FX業者が破綻したときに実際に返金されるかどうかの保証はありません。
分別管理と信託保全の大まかな違いをまとめると以下の表のようになります。
項目 | 分別管理 | 信託保全 |
顧客資産の管理 | FX業者 | 外部機関(信託銀行) |
第三者機関の監査 | なし | あり |
返金保証 | なし | 専門機関が返金処理の手続きを行う。 |
分別管理と信託保全の大きな違いは、「第三者が顧客資金の管理に関わるかどうか」と言えますね。
しかし、信託保全だからといって、完全に安心できるわけではありません。中には、信託している第三者機関がグループ会社ということも実際あります。FX業者の安全性を確かめるためには、顧客資産管理の方法だけではなく、金融ライセンスの有無などもしっかり見るようにしましょう。
資金管理方法も含めた海外FXの安全性や信頼性、安心して取引できる業者の選び方などは下記の記事にまとめています。
資金管理と金融ライセンスの関係性
海外FX業者の多くは世界各国にある様々な金融ライセンスをのどれか、もしくは複数を取得しています。この金融ライセンスの中には、信託保全の義務化を課しているものもあり、そういう意味ではどの金融ライセンスを保有しているかを確認すれば、その海外FX業者の顧客資金の管理体制がわかる場合もありますね。
特に厳しい審査をする金融ライセンスであれば、信託保全以外にも様々な投資家の資産保護の仕組みを備えている場合も多くあります。例えば有名な金融ライセンスであるFCAやCySecは以下のようになっています。
金融ライセンス | 規制 | 補償内容 |
FCA(英国金融行為監督機構) | 世界で最も厳格な審査をする金融ライセンスとして知られている。 ライセンスを更新するために、顧客管理状況や資産管理状況のチェックを定期的に実施。信頼性が高い。 | 金融サービス補償機構(FSCS)によって、最大5万ポンド(約650万円※)まで投資家の資産が補償される。 ※1ポンド=130円 |
キプロスライセンス(CySec) | 信託保全を義務化している金融ライセンス。 キプロスライセンスを保有していれば、信託保全を実施していることが分かる。 | 投資家補償基金(ICF)によって、最大2万ユーロ(約236万円※)まで投資家の資産が補償される。 ※1ユーロ=118円 |
日本口座を管理する法人に要注意
ただし、ここで注意が必要なのは、必ずしも日本人向けのアカウント・口座がその金融ライセンス管轄下で管理されているとは限らないという点です。例えば新興FX業者のXLNTradeは、その親会社がキプロスライセンス(CySec)を取得していますが、日本人口座向けには法人を分けており、マイナーなFSA(セントビンセント・グレナディーン金融庁のライセンス)下で管理されています。
XLNTradeに限らず、一見すると信託保全が義務化されている金融ライセンスを取得しているようで、実は別法人・別ライセンスで日本人口座は管理されているということがよくあります。他の海外FX業者紹介サイトなどではよく混同されており、親会社の保有ライセンスをそのまま紹介して「信託保全だから安心」と記載しているような記事もよく見かけますので、その点は注意しましょう。
分別管理について
分別管理の仕組み
分別管理は、「トレーダーから預かっている資産と、海外FX業者が保有する資産を分けて管理する」仕組みです。これは、FX業者の内部で運営費用と取引資金を分けているという意味ですね。
つまり、運営資金もトレーダーの取引資金も、管理しているのは同じFX業者ということになります。
分別管理のリスク
分別管理をしている海外FX業者は、FX業者側の資金とトレーダーの取引資金は別々の銀行口座で管理しています。一見安心できるように思えるこの仕組みですが、1つ大きな弱点がありますね。それは、外部機関の監査(チェック機能)がないという点です。
あくまでも、銀行口座の名義は海外FX業者ですので、内部で実際にどうなっているのかをチェックする仕組みが分別管理にはありません。極端な話をすれば、トレーダーには別々に管理しているように見せかけて、内部で流用することも可能になってしまいます。
また、海外FX業者側が倒産したときには、FX業者名義の資産がすべて差し押さえられてしまいます。つまり分別管理を採用している海外FX業者に万が一のことがあった場合、トレーダーの取引資金もすべて差し押さえられてしまうリスクがあるというわけですね。
以上のことから、信頼性や金融ライセンスなどの情報を総合的に判断する必要があります。
分別管理でも、別に資金保険をかけている場合がある
分別管理を採用しているFX業者でも、独自でトレーダーの資産保護に努めている業者もあります。例えば、大手海外FX業者であるXM(日本人向け・セーシェル法人)がそれに該当しますね。
XMではトレーダー資金はイギリスのバークレイ銀行(イギリス3大メガバンクの一つ)に完全分別管理されており、トレーダーの資産を流用するということはありません。それに加えて、日本人向け法人ではAIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)の資産保険に加入しており、万一、XMが破綻したとしても、最大で100万ドル(日本円約1億円)のトレーダー資金が補償されるようになっています。
つまり、分別管理によってトレーダーの資産が一部差し押さえられてしまっても、AIGの保険でトレーダーに資金を返還することが可能ということですね。これはほとんど後述する信託保全と同等の補償内容となります。
XMの他に、HotForexなどの海外FX業者も分別管理+資金保険という形で、顧客資金の保護をおこなっています。
信託保全について
信託保全の仕組み
信託保全は、「海外FX業者の運営資金とトレーダーの運営資金を完全に分離して管理をする」仕組みです。
分別管理とは異なり、トレーダーの資金は外部の信託銀行口座で管理されています。そして、トレーダー資金の管理をするのは「信託管理を委託されている外部機関」。厳しいチェック体制機能があり、海外FX業者がトレーダーの資産を流用することはできません。つまり信託保全が行われていれば、万が一海外FX業者が倒産したとしても、トレーダーの取引資金の返金が保証されるというわけですね。
そんな信託保全ですが、トレーダーの資産全てを外部機関が管理する完全信託保全と、外部機関が一部のみ管理する一部信託保全の2種類が存在しますので、それぞれ詳しく解説していきたいと思います。
完全信託保全
完全信託保全とは、顧客の資産全てを信託銀行が管理する方式で、FX業者とは完全に切り離された状態で、資金の管理が行われています。もちろん経営陣による横領や運営資金に流用することも不可能。つまり最も顧客資産の安全性が保障されている方式といえます。
FX業者が倒産した場合でも、顧客の資産はFX業者名義ではありませんので、差し押さえられるリスクはありません。外部機関である信託銀行から速やかにトレーダーへ返還されるようになっています。
このようにトレーダーの資金保護という意味では非常にメリットが大きい完全信託保ですが、海外FX業者で完全信託保全を採用している業者は少ないというのが現状です。日本の国内FX業者は、金融庁によって完全信託保全が義務付けられていますが、海外に拠点を持つFX業者は金融庁の管轄外のため、その拘束力がないためですね。
また海外FX業者は世界中でサービスを展開しているため、各国の様々な規制を受けることになります。それぞれの地域で信託保全にしてしまうと、管理が複雑になってしまうというデメリットもあり、それも信託保全ではなく分別管理を採用する理由となっています。
完全信託保全を採用している海外FX業者
主要な海外FX業者の中で、完全信託保全であることが確認できたのは下記の2業者です。
海外FX業者 | 補償内容 | 備考 |
FBS | 完全信託保全 | 資産保護保険にも加入している。信託先銀行は幾つかに分かれているが非公表。 |
Axiory | ドーハ銀行※に完全信託保全。口座残高、確定利益分、未決済の評価損益まですべて返還される仕組みになっている。 | |
Anzo Capital | 利益分を含めて銀行の信託口座に全額信託保全 |
※中東カタール、ドバイにある民間銀行最大手。
やはりほとんどの業者が分別管理もしくは一部信託保全となっており、なかなか完全信託保全の業者はありませんね。そういう意味では、上記2社は顧客資金管理についてはかなり信頼性が高いと言えます。
一部信託保全
一部の海外FX業者では、すべての資金を保全する完全信託保全ではなく、一部信託保全を採用しているケースがあります。これはある一定の金額までの口座残高については信託保全で管理され、トレーダーに資金が返還される方式ですね。しかし、補償金額を超える分についての返金は保証されません。
一部信託保全を採用している海外FX業者
海外FX業者 | 補償内容 | 備考 |
Tradeview | 35,000ドル(約380万円程度)まで信託保全。 | サンタンデール銀行※にて分別管理、一部信託保全(380万円) |
※スペイン最大の商業銀行グループ。
Tradeviewの場合、口座残高の35,000ドルまでは必ずトレーダーに返還される仕組みです。こまめに出金するなどして、口座残高が35,000ドル以上にならないように注意すると、もしものときにも安心ですね。
資金管理体制が優れたおすすめの海外FX業者
Axiory(全額信託保全)
2019年のbitwallet取扱い停止以降、ニュースの話題に上ることが多いAxioryですが、海外FX業者の中では最も安心できる資産保護体制を備えている会社といえるでしょう。
2019年8月には中東カタール民間銀行大手、ドーハ銀行をメインバンクとすることを発表し、口座残高や評価損益などのすべてを完全信託保全で管理しています。情報公開にも非常に積極的であり、2019年8月現在、完全信託保全を実施し、提携銀行などの詳細情報を公開している海外FX業者はAxioryのみです。
bitwalletは使えなくなりましたが、Curfexという国内銀行送金サービスを新たに提供しており、入出金も比較的おこないやすくなりましたね。ボーナスなどはありませんが、取引環境(スプレッド・約定力)や資産の安全性、取引の透明性を最も重視している、信頼性の非常に高い海外FX業者です。
XM(分別管理+資金保険)
レバレッジやボーナス、信頼性の高さなど、総合力が非常に高く日本人人気ナンバーワンでもる海外FXの代表格XM。顧客資金管理の方法は信託保全ではありませんが、分別管理に加えて資産保険も備えているということで、安全性は高いといえるでしょう。
過去には、スイスフランショックのような大きな金融危機により多くのFX業者が破綻する中、しっかりとゼロカットを実施したことで、XMの信頼性の高さは保証されています。日本語サポートの充実度なども含めて、初心者であっても安心して取引できる海外FX業者です。
FBS(全額信託保全+資金保険)
FBSは日本人口座でも全額信託保全の対象であることに加え、資金保険もありということで、顧客資金の安全性という面では最も優れていると言っても過言ではないでしょう。万が一FBSが破綻したとしても速やかにトレーダーの資産は返金されます。資金保険にも加入しているので、補償内容としてはまさに完璧と言えますね。
レバレッジは圧倒的な3000倍、ボーナスも非常に豪華であり、FBSはまさに海外FXの魅力を存分に味わえるブローカー。ただ資金保護に関する情報が完全公開されているわけではないため、Axioryと比較すればやや透明性には欠けるかもしれません。また若干日本語サポートなどに弱く、日本人スタッフも現在はいないようですので、その点で利用をためらう人もいますし、どちらかというと上級者向けの海外FX業者と言えます。
まとめ
大きな金融危機などにより、突然会社が破綻してしまうということは決して珍しくありません。そのためFXに限らず自分の資産を預けている会社が、どのようにそのお金を管理しているかを知るのは非常に重要と言えますね。海外に拠点を持つ会社であれば、なおさらその情報は重要になります。
また各FX業者の資産管理体制は変更になることも多くあります。自分の資産をしっかり守るためにも、利用している業者、利用を検討している業者の情報は、こまめにチェックするようにしましょう。
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