海外FXなどの年間通算で利益を出した場合に気になるのがその税金。もちろん利益がある以上、申告と納税の義務は発生するのですが、国内FXで利益を出した場合と海外FXで利益を出した場合では課税方法が異なります。
そのため海外FXの税制について理解しておくことは非常に重要で、利益を出した場合にどのくらいを税金分だと考えておけばよいかを理解しておけば、より安心してトレードに臨むことができますね。
そこでこの記事では、海外FXにおける税金制度やその計算、さらには税金対策や節税方法まで、それぞれ具体的に解説していきたいと思います。
海外FXの税制 ~課税区分と税率について~
前述の通り、海外FXと国内FXの税区分は異なります。そのため、まずはそれぞれについて分けて解説したいと思います。
海外FXは総合課税の雑所得
海外FXの利益は総合課税の雑所得に分類されます。雑所得に分類されるほかの所得としては、仮想通貨取引の利益や海外バイナリーオプションの利益、そしてライターの原稿料、副業の収入など様々なものがありますね。
総合課税の雑所得に分類されることによる最大の影響は、収入が大きければ大きいほど、ほかの所得に対する税率や税額も一律に増加する累進課税方式になるということです。
まず、所得税に関する下の表を見てください。
※国税庁ホームページより
もし海外FXの利益が100万円で、その他の雑所得が100万円、そして給与所得(控除後)が300万円の場合には、合計金額である500万円に課税されます。
この場合は、所得税率は20%で、それに2.1%の復興特別所得税が課されるというわけですね。
さらに、住民税は所得税とは別で課税されます。住民税は一律10%となっていますから、海外FXの税率は実質15%~55%(+復興特別所得税2.1%)だということがわかります。
申告分離課税の国内FXと総合課税の海外FXの違い
総合課税の雑所得である海外FXに対して、国内FXの場合は同じ雑所得でも「申告分離課税の雑所得」という税制度になっています。これはほかの所得とは全く別カテゴリーで課税されるという仕組みですね。
そのため国内FXの税率は、海外FXのように課税所得額によって変動することはなく、一律20.315%(所得税+復興特別所得税+住民税)となっています。
また、国内FXでは海外FXにはない「損失繰り越し」という制度も採用されています。これは、過去3年間の間に損失分を確定申告していれば、利益が出た場合であっても過去の損失額と相殺できるという制度ですね。
例えば、前年に100万円の損失となった後、当年では200万円の利益となった場合には、200万円から100万円を差し引いた100万円に課税されます。海外FXの場合は、前年にいくら損失があっても当年に持ち越すことができず、当年分の利益に対しては全て課税されてしまいますので、これはかなり大きな違いになると思います。
このように国内FXと海外FXでは全く税制度が異なっています。税率についても一律20.315%の国内FXに対して、海外FXでは国内FXより安くなることもあれば、2倍以上になることもあるといえますね。
海外FXと国内FXの損益通算の違い
海外FXの損益と通算できるもの
海外FXの損益は雑所得(総合課税)ですので、ほかの雑所得の範囲内で損益通算することができます。
つまり、ある海外FX業者で利益が出て、別の海外FX業者で損失が出ている場合には、その損失と通算することができるというわけですね。さらにFX以外の雑所得との損益通算も可能なため、海外バイナリーオプション業者や仮想通貨取引もちろん、例えばネットオークションや副業における損失などとも、損益通算が可能です。
一例としては以下のようなケースが考えられますね。
・XMで年間200万円の利益
・TitanFXで年間80万円の損失
・ハイローオーストラリアで年間50万円の損失
・仮想通貨取引で10万円の損失
・ネット転売の失敗など副業による10万円の損失
このような場合には、全ての損益を相殺して50万円が雑所得ということになります。
国内FXの損益と通算できるもの
国内FXでも損益通算が可能ですが、こちらは他の「先物取引に係る雑所得等」の金額との損益通算に限定されています。「先物取引に係る雑所得等」とは例えば日経225先物取引/商品先物取引のような「先物取引」、日経225先物オプション取引のような「オプション取引」、そして取引所外国為替証拠金取引のような「FX」ですね。
これらの取引において損失が発生した場合は、損益通算をして利益から差し引くことができます。
このように損益通算においては、限定されている国内FXよりも特定のジャンルに限定されない海外FXの方が、やや適用範囲が広いということが言えますね。
海外FXと国内FXの2つの損益通算はできない
上記の通り、国内FXと海外FXでは損益通算可能なものが異なります。そのため国内FXと海外FXの間での損益通算をすることはできません。
例えば海外FXで総計100万円の利益、国内FXで総計100万円の損失の場合には、実質的にはFXの損益は0円です。もしこれが同じ海外業者や国内業者同士であれば、相殺できるのですが現在の税制では海外と国内FXの損益通算はできないということですね。
でそのため海外FXや国内FXで年間収支がプラスになった場合には、それぞれの金額に応じて税金が発生することになります。
場合によっては、まったく儲かっていない(むしろトータルで損している)ケースでも税金を払わなければならないことがありえますので、海外FXと国内FXを併用する場合は、こういった面でも注意が必要になります。
海外FXで税金の支払いが不要な場合
海外FXの利益が雑所得になるということは上で説明してきました。次はその雑所得に対して納税する必要があるかどうかですね。海外FXを利用していて確定申告&納税が必要なのは、以下の条件に該当する人となっています。
・給与所得が2000万円を超える人、もしくは個人事業主
・給与所得が2000万円未満で雑所得が20万以上の人
・給与所得がなく雑所得が38万円以上の人
ここでいう「雑所得」には海外FXの利益だけではなく、仮想通貨の利益や原稿料、副業の収入などすべての雑所得を合算したものです。
つまり「サラリーマンとして給料をもらっている人で、海外FXの利益が20万円未満(または損をしている)の場合」には確定申告をしなくてもよい(年末調整のみで可)ということですね。
また「無職の人で海外FXをしている(つまり専業トレーダー)場合で、利益が38万円未満(または損をしている)の場合」にも確定申告&納税は不要となります。
一方で「給与所得が2000万円以上、もしくは個人事業主(≒自営業)」の場合、もともと海外FXをしていなくても確定申告の必要があります。そのため利益の有無に関わらず、海外FXをしている場合は年間通算成績を確定申告し、納税の必要がある場合には納税する必要があります。
国民健康保険料にも要注意
税金ではありませんが、国民健康保険料も海外FXの利益に応じて増額します。
国民健康保険料の計算方法は各地方公共団体によって異なりますが、多いところでは所得の1割程度が徴収されます。
そのため所得税や住民税といった税金の支払いのほかに、国民健康保険料として海外FXの利益の1割程度はよけておくことをおすすめします。
海外FXの税金対策 〜税金を安くするには〜
海外FXの税金は、利益が大きければ大きいほど高くなります。しかし、その利益を海外FXのトレード環境に費やしていたり、ふるさと納税に使ったりすると、税金の金額が安くなることもあります。
海外FXの税金を安くするための節税方法としては、「必要経費」と「控除制度」の2つがありますので、それぞれについて解説します。
経費として計上できるもの ~パソコンやVPS利用料など~
「必要経費」とは、その収入を得るためにした必要な出費のことを言います。
例えば、仮に海外FXで100万円の利益を上げていたとしても、その利益を上げるために20万円の必要経費がかかっているとすれば、実際の利益(所得)は80万円だということになります。
海外FXにおける経費として一般的なものとしては、以下のようなものがありますね。
・パソコン購入費用:10万円を超えるものについては減価償却の計算が必要
・ディスプレイなどのパソコン周辺機器
・FXをするための光熱費や(専用のトレードルームがある場合は)家賃
・トレードをするために費やした各種手数料:入出金手数料や取引手数料
・VPS(バーチャル・プライベート・サーバー)利用費
・FXに関連する書籍や情報商材の購入費用
・FXに関連するセミナーの参加費用や交通費
またその経費のうちの「何割か」をFXに費やして、残りの割合はそのほかの目的に使用したという場合には「家事按分」という計算処理をする必要があります。
例えば、パソコンを購入してそのうち5割くらいをFXトレードに使用した場合には、家事按分比率は50%とし、費用の半分を経費として申告することになります。
活用できる控除制度~寄付金控除や社会保険料控除など~
こちらは海外FXに限った話ではありませんが、一般に節税に活用されている控除制度をいくつか紹介します。
例えば最近CMやニュースでも耳にすることが多くなった「ふるさと納税」は有名な節税制度ですね。好きな地方公共団体に寄付をすればその寄付金額は「寄付金控除」となって、税金を安くすることができます。
これだけであれば本来納税すべきお金を別に支払っただけとなるのですが、「ふるさと納税」のポイントは地方公共団体によって、返礼品が貰えるという点ですね。控除の上限や返礼品の還元率上限はありますが、上手く使えばしっかりと節税することが可能です。
他にも毎月一定の金額を積み立てて、あらかじめ用意された定期預金・保険・投資信託といった金融商品を自ら運用する「iDeCo(個人型確定拠出年金)」も、有効な税金対策になりますね。60歳以降にならないと引き出すことができないというデメリットはありますが、その掛金全額が所得控除の対象となるため、将来への備えをしながら、同時に節税もできるという素晴らしい制度となっています。
海外FXの利益のうちのいくらかを、寄付やiDeCoなどに費やしておけば、税負担を軽くすることができますね。利益が出ている人にはぜひおすすめしたい節税方法となります。
まとめ
この記事では海外FXの税制について、大まかな仕組みから節税テクニックまでそれぞれ見ていきました。
もちろんまずは海外FXで利益を出せるようになることが先決ですが、もし利益が出そうであれば、この記事を参考に税金について考えてみてはいかがでしょうか。
テーマ別の海外FX業者の選び方などは、下記の海外FXの始め方マニュアルに詳しく記載しています。
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